新任教員紹介:中澤暦講師

2021年4月、環境・社会基盤工学科に着任しました、中澤 暦と申します。

赴任して以来、居室に向かう廊下の先の窓から見える雄大な立山連峰の四季の移ろいを毎日確認することが日々の日課になっています。私の大のお気に入りの立山連峰は、絵描きの友人にデザインしてもらった名刺にも描かれています。

よく学生に、今日は立山がきれいに見えるね、雪化粧したね、と話をするのですが、学生は「へー・・・。そうですかぁ?」と、身近すぎるのか、あまり関心はなさそうです。

小さいころは家の庭での土いじり、虫の観察が大好きでした。雨上がりにナメクジが花壇を這っていたのをじいーっと見ていた私に母は、「ばっちい(きたない)から、ナメクジだけは絶対にさわったらだめ!」と言い含めて、先に家に入ったそうです。

その後、家の中からこっそり観察していたところ、案の定、幼い私はナメクジをさわって、それを確認していたそうです。「あ~あ、やっぱりさわったか・・・」。しかし、本人はそのこと自体覚えておらず、残念なことにそのときの感触も記憶にありません。
今ではナメクジは絶対にさわりませんが、研究に限らず、いろいろなものを自分で見たい、確かめたいという気持ちは変わりません。

現在、環境科学・環境リスク学を専門として研究をしています。とくに環境中の水銀やマイクロプラスチックをキーワードにした研究を精力的に行っています。

水銀は、環境中に広く存在しています。地球温暖化によって、凍土や陸域に閉じ込められていた水銀が大気に放出されているともいわれます。人の手による汚染(人為汚染)源としては、小規模金採掘 (ASGM) 、化石燃料燃焼などがあります。

人為汚染源の一つである、小規模金採掘活動が行われている現場では、大量の水銀が無防備に使用されており、環境の劣化、ヒトへの健康影響が懸念されています (図1) 。こういった現場での調査や、調査に必要なサンプラーの開発、ヒトや生物に関するリスク評価を行っています。

また、年輪、コケ、土壌、樹氷 (図2) といった媒体中の成分を測定して、水銀・マイクロプラスチックなど、環境汚染物質の環境中での動き(動態)を明らかにする研究も進めています。

地域、そして世界の環境を学生とともにつぶさに観察し、ワクワクしながら研究をしていきたいと思います。よろしくお願いします。


               図1小規模金採掘地のようす。


                  図2 九重連山の樹氷
(上) 樹氷が着氷するようす。九州の樹氷は寒気が去ると、すぐ脱落するため着氷した時間を特定できる。樹氷に含まれる成分がどこから来たのか?を考察するのに最適である。
(下) 大気中マイクロプラスチックを研究するために、ガラス瓶をザックに入れて登山する。写真のガラス瓶はピクルスなどを作る際に活躍する容器。